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翔栄クリエイトのオフィスデザインのやり方は、一般のデザイン会社とまるで異なるものだった・・・。
今春、本社オフィスのリニューアルを同社に依頼した、人材コンサルティング会社・gシステムのa社長は、こう振り返る。まず、デザインと見積もりを出してコンペに参加して欲しいと要請すると、「当社はそういうやり方をしていない」と丁重に断られた。それでも同社の実力を知る担当者が、自社の会長と翔栄クリエイト社長宇佐神慎の会談を東京でセット。事業に対する思いや経営のスタンスを語り合った2人は意気投合。会長が「ぜひお願いしたい」と言うと、宇佐神は「コンペをストップしていただけるなら」と応えた。
1ヵ月後、宇佐神はプロデューサー、デザイナーを引き連れて神戸にやってきた。「来社するとすぐに、ヒアリングしたいと。当社の経営理念から、事業内容、社員構成、社員教育の仕組み、採用活動、収益モデルなどを丸一日掛けて聞かれました。それこそ融資を受ける際の、銀行のヒアリングと変わらない、多岐にわたった細かいものでした」(a>社長)
後日、提示されたデザインを見て、a社長は驚いた。リニューアルされたオフィスは、開放的な共通スペースが特徴で、社員たちのコミュニケーションを活性化させる工夫が随所に施されていた。社内の風通しの悪さは、a社長がここ数年、強く感じていた会社の問題点だった。
借金3億円の返済のため新会社を設立
大学卒業後、知人の紹介によりビジネスフォンを販売する営業会社に就職した翔栄クリエイト代表宇佐神慎。規制緩和により民間企業がビジネスフォンをリースするビジネスがブームとなり、それに乗った形で起業された会社だった。が、入社した頃はそのブームも下火に。
「ビジネスフォン市場も一巡を終え、伸びる気配は終了していました。そのため、経費が払えずに会社の電気や電話が止まる時もありました」しかし、飛び込み営業に才覚を表した宇佐神は、入社3ヶ月で社内のトップセールスに。順調に売り上げも伸び、支店の新規立ち上げメンバーに加わった。「電話器だけでは先細りなのでoa機器も扱うことにし、自ら仕入先を開拓したのです。高価なカラーコピー機などを扱い、3年目には月間2000万円の粗利を上げるまでになりました」
そこで経営者は、支社を全国に13ヶ所も設立。しかし、oa機器の価格競争の激化に危うさを感じていた宇佐神は、経営者の拡大路線に反対する。しかし聞き入れられず、結局、会社は数億円の負債を抱え込む。各支社で扱う商品は宇佐神が開拓した仕入先から納入していたが、その買掛金も約3億円に達し、支払えず仕入れができない状態に・・・・・・・・・・・・。
「仕入先が困っている姿を見て、取引を始めた自分の責任を痛感しました。会社が払えないなら、自分が何とかしなければ、と思ったのです」それが宇佐神の唯一の起業の目的だった。元の会社に在籍しながらoa機器やオフィス家具の仕入れを行う会社を設立。営業は元の会社で行い、その利益で返済していった。>3年前に負債処理を終える。
「勤務先とは縁を切りました。それまでは仕入先の手前もありましたし、やはり勤務先の経営者に対しても忠誠心を感じていましたから。でも、雇われながらも常に『自分ならこうする』と考え続けていたことが経営のいい勉強になっていたようです」
会社の将来を玄関先で予測できることがネタに、自分にしかできないもっと社会に貢献する事業をしたい。経営者となってそう考え始めていた宇佐神は、営業で訪問した会社の将来をある程度予測できるようになっていたことに思いを巡らした。
「いくら会社の理念や戦略が立派でも、オフィスなどの外見で判断されてしまうこともある。ならば、私はデザインを軸に会社をブランディングする事業をやろう。そう考えたのです」
顧客の業績を伸ばすデザイン
「私どもはお客様に事前に、『おたくの業績を伸ばすオフィスをデザインする』とはっきり言います。そのために、経営者の考えや社員、会社の情報を得てからでないと、デザインには取りかかりません」(宇佐神)
オフィスが何平方メートルで、必要な机、部屋数はいくつといった情報だけでデザインしろという企業は、よそをあたってくれと宇佐神は言う。しかし、デザインで業績を伸ばすとは、どういうことか。企業を振り向かせるためのハッタリではないのか?そんな嫌味な質問をぶつけると、宇佐神は笑顔でこう答えた。
「企業の業績は、社員のモチベーションと”会社がかもし出す雰囲気”により大きく左右される。当社が提供するのはそれらを高めるデザインです」社員のモチベーションが高まるのは、宇佐神のデザインするオフィスは、その会社の仕組みまで変えてしまうからだ。
神奈川県座間市のt自動車教習所から、教習生獲得のために斬新なデザインにしたいとの話があったとき、宇佐神は5時間を費やし経営者と面談し、事務棟を見て歩いた。そして、受付だけ変えても教習生は増えない、という結論に至った。
宇佐神の目に映ったこの会社の課題は、「教官が隔離されていること」だった。授業時間以外は多くの教官が専用室に引きこもってしまう。経営者自身は「顧客第一主義」を掲げていたが、肝心の教官たちにはその思いは伝わらず、教習生の運転技術向上のための相談に乗るような機会は、ほとんどなかったのだ。
翔栄クリエイトの提案は、教官や教習生、事務員が自由に交流できるよう、事務棟全体をリニューアルすることだった。広々としたフロアーで明るく開放的なオフィスになることにより、事務所全体に一体感が生まれ、教官達は自然と、教習生や事務員と積極的にコミュニケーションを取り始めた。教習生からの評判は高まり、噂は噂を呼び新たな教習生の獲得に結びついていったという。
”会社がかもし出す雰囲気”を変えることで業績がアップした好例としては、まさに翔栄クリエイト自身がそうだった。
「当社は机一つで椅子はナシ、電話も床に置いた状態からスタートしました。当然、銀行もお客様も相手にしてくれなかった。しかし、洗練されたオフィスにすると、銀行もお客様も信用してくれ、入社希望者も現れるようになりました」
翔栄クリエイトの前身、翔栄システムは、97年に起業したとき3億円の借金を抱えていた。その後、毎年業績を伸ばし、04年に借金を完済。この実績がなにより「業績を伸ばすデザイン」のセールストークに説得力を与えている。モチベーションや信用力の向上を謳うデザイン会社は少なくないが、同社の場合、それらは机上で考え出したものではなく、宇佐神が自らの経験を通して重要性に気づき、つかんでいったものだった。
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| 出展:日経ベンチャー 2006.10 |
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特集2:モチベーションとオフィス |
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