弊社神保:今回のオフィスは丸芝様の「創業90年の歴史」をデザインテーマとしました。オフィスはただ格好良くつくっただけでは意味がないと思っています。「御社にとって一番いいデザインとは何なのか」を考えたときに、やはり創業90年という事実は御社の強みであり相当な武器ですから、オフィスからもその歴史を感じられるデザイン・モノを前面に、あるいは空間の随所に盛り込みました。例えば、エントランスの「地層」をモチーフに歴史の積み重ねを表現したデザインや、古い資料や取扱商品を展示をしたりといったことです。
松岡社長:そうですね。それらがちゃんとオフィスから伝わってくると思います。
弊社神保:ありがとうございます。いまでも記憶に残っていますが、「歴史を感じさせるような、何か古い資料や取扱製品はありませんか」と依頼したところ、本当にたくさんのものが挙がってきました。貴重な資料がまだ残っており、またその数の多さに驚きましたし、御社の歴史の深さを実感しましたね。図面や販促チラシ、中には当時の株券までありました(笑)。
松岡社長:ずっと書庫で眠っていた古い資料が、いま新しいオフィスで日の目を見るようになり本当に嬉しいです。私たちはこういった資料をオフィスで展示しようなんて思ってもいませんでしたから。
松岡部長:そうですね。デザインにしろ、資料の展示にしろ、私たちが想定していなかったものを色々と提案していただきました。
弊社神保:お客様には見ていただけていますか。
松岡部長:みなさん、見てくださいます。
松岡社長:私の場合は「これは何ですか」と質問をされる前に説明をしてしまいます(笑)。ひとつひとつ立ち止まりながら、いまはなき住所地番の古さなどに驚きながら、食い入るように見ていらっしゃいます。
弊社神保:それはよかったです。それと非常に楽しい経験だったのが、松岡部長と一緒に年代物の東芝製モーターを御社のお取引先企業の工場へ探しに行ったことですね。什器や内装の仕上げ材選定のために、メーカーのショールームに行くことは常にありますが、会社の歴史を感じさせる展示物を探しに行くという経験はほとんどありません。
松岡社長:宝探しといいますか、発掘に近いですよね(笑)。同行をお願いしたのは、オフィスに展示するにしても、やはり現物を見ておいていただかないと「イメージが沸かないのではないか」と心配したわけです。立川まで行っていただくことにはなりましたが、大きさ、古さ加減、どの程度まで手入れをしておいた方がいいのかという部分を、確認しておいていただきたかったんです。
松岡部長:大きさの問題もありますが、「年代物のモーターをオフィス内でどう見せるか」ということも、実際に現物を見ていただいた方が考えやすいと思いました。
弊社神保:私としてもあらかじめ実物を見れたことはよかったと思っています。初めは敢えてきれいに磨き過ぎず古さを残したままでの展示を考えたのですが、面白いことに実際にモーターのプロから見るとまた意見が違ったんですよね。
松岡部長:そう、「逆にきれいにしておいた方がいい」と言うんですね。
弊社神保:そういった感覚もマニアックな話で興味深かったです。話題にも上りますか。
松岡部長:あの古い型を知っている世代の方々も結構来社されますから、「これは懐かしい、どこで見つけたの」「まだ残っていたんだね」なんて言われます。もちろん当社の古株社員も「ああ確かにこういったものだった」と懐かしんでいます。
松岡社長:その当時を知らない方でも、「5.5型は、こんなに大きかったのか」なんて、いまのモーターとのサイズの違いに驚いたりね。
松岡部長:このモーターは非常に格好いいと思っているんです。古い感じのデザイン、重厚感といいますか、いまのものとはまた違う味があっていいですよね。